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システム障害後の情報システム部の姿勢について / あるいは仕事で重視されるマインドの話

皆さんは仕事をするうえで最も大切なことは何だと思いますか?


「誠実さ」「仕事を楽しむ気持ち」「顧客満足度」「社会貢献」他...様々な回答が飛び交うと思います。
とはいえ、経営層が考える回答がそのまま社員の回答に繋がるケースが多いです。


そんな中、僕の会社は何を重視するか。



メンツです。


kotobank.jp

中国語をそのまま使用したもので,日本語としては面目,体面ともいい,世間に対する体裁を意味する。古い中国の社会では外面的な態度や行動がその人の価値を決定し,世間体,他人のおもわくが人の態度,行動を制約した。日本でも封建社会では身分制がきびしく,武士はその体面をけがさないように行動した。「面子を立てる」とか「体面をつくろう」という場合,その実がないのに表面だけをつくろって威厳を保つ態度,行動を意味している。こうした外面性,形式性に偏したいわば悪い面ばかりでなく,自己の面子を保ちながら他人の面子も重んじることにより,人間同士の交際に洗練と優雅をもたらす面もある。



メンツは人間同士の交際に洗練と優雅をもたらす面がある。

つまり、メンツとは日本の心そのものです。


この国際社会に生きる中で、僕の会社は日本人としての心を忘れない、サムライスピリッツ溢れる会社だということです。




そんなメンツを大切にする僕の会社で、ある日システム障害が発生してしまいました。

システム障害対応は、僕が所属している情報システム部の業務範囲です。


いくらバーチャルなソフトウェアとはいえ、実際にはどこかのハードウェア上で動作しているもの。

ハードの経年劣化、停電等不慮の事故によるシステム障害からは逃られません。



障害復旧のために、深夜~早朝間で確認作業が必要だったとしましょう。もし確認してNGだった場合は、翌日以降に再度対応となります。


SE的な合理性で考えれば、早めで会社に来て確認作業をしてそのまま午前中まで働き、早上がりするのが良い、と答えるところでしょうか。


でもそれでいいんでしょうか?情シス部のメンツを保てていますか?

そんな対応で、プロジェクトXの渋いナレーターボイスで喋ってもらえますか?「部長は言った、"明日の朝早めに出て、午後休にしよう"」そんなんじゃ地上の星は流れません。

そう、僕の会社における正しい回答は、深夜まで残って確認作業をして会社に寝泊まりすること。
このアピールがとても重要です。



「早朝に対応できるにもかかわらず、会社に泊まるその根性。素晴らしい。さすがは情報システム部だ」これだけで社内の評価はうなぎのぼり。メンツは保たれる。


やりましたね、部長!


会社に寝泊まりしたあとも、翌日は定時まで待機です。


「システム稼働監視メールは届くけども、念のため待機」という1%のリスクに99%のコストを支払う業務が与えられる一方で、「前日遅くまで頑張ったのだから、必要以上に働くことはない」と武士の情け精神で待機以外の仕事は免除になりました。


待機といいますけど、機械というものは初期不良を除けばそう簡単に壊れません。


実のところ、待機とは椅子に座って何も変化がないモニターを8時間眺めることになります。これはとても辛い。僕の会社で最も辛い仕事です。

暇な時間があると色々と考えてしまいます。

なぜ障害が起きたのだろう。二重化は?
「予期しない障害でサブシステムの切替機能が働かなかった」とはどういうことなのだろうか?「車が事故を起こした場合、エアバッグは開きません。」と言っているのと同じではないだろうか?

ただしこのような発言をうっかり口にしてはいけません。
人が対応できる範囲には限界があります。我々一般人には、あえて目を背けておいたほうが良いこともあるということです。


そんなこんなで少し意識を失いながらも定時を迎えることができました。


営業「お疲れ様!大変だったね。昨日は泊まったんだって?」

僕「ご迷惑をお掛けしたのは我々ですから、大変だなんてとんでもないです。なんとか復旧できました。」



このようなメンツを維持する仕事に、地獄のミサワよろしく「つれー、寝不足つれーわー!」というアピールはいりません。


ここでのアピールは日本式Ken-Sonの心を試されているのです。


辛いときこそ騒がない。言葉ではなく背中で語るのです。
こうして僕はふらふらになりながら帰宅しているのでした。


ピンチのときにこそ、その会社を支えている価値観がわかります。

「メンツ」の重要性は僕に深夜残業代を支払うほどの価値があったのかわかりませんが、みんながそれで幸せなら何も文句は言いません。



こんな無茶な残業は、1年でも1回あるかどうかですから。

SEだった時の欧米式ミーティングで、「これは私の契約範囲ではない。」とグレーゾーンで大揉めしていたときよりもずっと楽な気持ちで働かせてもらっています。



今年はこれ以上に過酷な仕事は来なさそうだったので、僕個人の辛い仕事オブザイヤーのお話でした。