ゲームがやりたい

ゲームがやりたいと思えるような記事を書きます。

「父親なら子どもに生き様を見せつけろ」と説かれた話

息子が通う幼稚園では、定期的に父母向けのセミナーが実施されています。

気分転換にもなるし、セミナー費用もかからないし、これ自体は大変ありがたいお話だと思うのですがいかんせん僕はゲーム以外にまるで興味がない狂人なので参加していなかったんです。

ゲームだって気分転換になるし、(もう買っちゃってるから)費用もかからないし、最高に楽しいじゃないですか。ゲームだけして生きていきたい。

しかし先日、「ぜひ父親の参加をお願いしたい」というセミナーがありついに僕も参加することになってしまいました。



セミナー会場に付くとそこには大量の父親。息子は義両親の多大なる援助のおかげで良い幼稚園に入れてもらい、僕が普段行く公園でみかけるような父親達とは格の違う人間が集まっています。

「あまり来ない場所だからポケストップの初期ボーナスXPがすげぇ!」なんて思いながらスマホ取り出してポケモンGoやっているような人間は僕しかいないんですよ。皆、ただじっと講演が始まるのを待っています。ポケストップはもう回しているか、あとで回す、ということでしょうね。


ポケモンも捕獲し終わっちゃったし暇だな、なんて思い始めたところで講演が始まりました。

今回のテーマは、「自立した子どもを育てるために親ができること」。


以下、僕の悪意に満ちた要約です。


講師「母親というものは子どもを守る無償の愛を与えることができます。ただ、それだけで生きていけるほど世の中は甘くはないのです。子どもはペットではないのですから、いつかは自分の力だけで、自立して生きていかねばなりません。

子どもにとって、一番身近にいて自立している人間とは誰か。それは家庭を守り、仕事をしている父親です。信念を持って仕事をこなす父親の一挙一動を見て、子は成長していくのです。」


なるほど、たしかに父親である僕を対象としたセミナーです。

ただ僕には信念などという大それたものは持っちゃいません。そつなく仕事をこなし、波風が立たぬよう日々を過ごす。それで定時くらいに帰って子どもを寝かしつけたあとゲームができれば、それで十分じゃないですか。


お金も名誉もいりませんよ。欲しいのはポケモンGoトレーナーレベルやスマブラの世界戦闘力です。



講師「信念を持たずに仕事をしてはいけません。ただ目の前にある仕事をこなすだけで、社会に貢献しようという気持ちがないような人の仕事は退屈です。何かの役に立とうという気持ちのない仕事は楽しくないのです。

誤解されぬように言いますが、これは別に、小学校の頃からの夢だった仕事に就け、たとえばメジャーリーガーになれ、という話ではありません。

自らの仕事に信念を持ち、誰かのためになる、何かの役に立つという誇りを持って仕事に取り組んでほしいのです。そういう姿勢で社会に出るあなたの姿を見ていると、子どもは自立した大人になりたいと思うのです。」



なんてことだ、僕の仕事を全否定されてしまった。

きっと講師の方に「この前は異常が出ないかどうか、8時間ずっと変化の無いモニターを見ていた。」と言ったら卒倒してしまうでしょう。「知ってる。それドモホルンリンクルでしょ?」と好意的にとらえてくれる可能性は低そうですね。



こんなありがたいお話を1時間半ほど聞いたあと、なんと講師の本が本日この場で購入できるというサプライズ!

実際講師の方はすごい経歴でした。テレビにも多数出演しているし、世の中に残した功績も偉大なものばかり。「信念を持って仕事をする」ということを口先で語るだけでなくしっかりと行動しています。


だからと言って、ありがたやありがたやと買ってしまったらそれこそ自分の信念が無い気がするじゃないですか。手書きでサインしてもらえますって別にファンではないですし。



周りのお父様もあまり買わないんだろうなぁ、と思っていたらこれがもう長蛇の列なんですよ。急に壁サークルが出来上がっちゃってる。みんな読むんですか?せめて読むにしても、Kindleや古本市場で安く買えないんですか?


しかもあちらこちらでお父様同士で名刺交換しているし。スーツじゃなくても名刺って持ち歩くんですね。

僕は当然そんなものは持っていません。ポケモンGoかNintendo Switchなら今すぐフレンドになれるのでそれでいいですか?


「すみません、名刺は無いのでポケモンGoのフレンド申請で。」と言えるほどのコミュニケーション力が僕にはないので早々に会場をあとにしました。


家に帰ってから妻にこのことを話しました。よそで安く買えるかもしれないのにみんなあの場で買うっていうんだから気が知れないよ、と悪態をつくと

「まぁ、そうやってやらない理由をつけて夜な夜なポケモンを捕まえに行くあなたよりは、たとえ読み終わらなくてもすぐ行動に移せる人のほうが立派だよね。」とチェーンソーで真っ二つにされるような正論をぶつけられました。


何も言い返せない僕は、ハハッと乾いた笑いをしたあと「ポケモン捕まえてくるわ」と家を出ます。12月の寒さが身に沁みます。でも、夜にジム配置するとポケコインが稼ぎやすくておいしいんですよ。


かじかむ手でボールの軌道は定まらず、4,5球外してマダツボミをゲット。


息子よ、これが僕の生き様だ。